不動産投資における「頭金」とは、不動産投資用の物件をローンで購入する際、場合によっては必要となる資金です。
頭金を入れることで、金融機関のローンが組みやすくなったり、ローン金額が少なくなることで金利を低くしたりできます。
しかし、不動産投資での頭金の目安はいくらか、そもそも頭金を入れるべきなのかなど、疑問に思う方も多いはず。
本記事では、不動産投資で頭金は必要なのか、頭金を入れることによるメリット・デメリットを紹介します。
一般的な頭金の目安や、自己資金を抑えて不動産投資を始める方法も紹介するため、参考にしてください。
不動産投資で頭金は入れるべき?
一般的には、不動産投資で頭金を活用するべきでしょうか?
- 個人の判断・資金次第
- 2割程度の頭金を入れている人が多い
- 不動産投資ローンは年収の5〜10倍が目安
頭金を入れるべき属性や、目安になる割合について解説します。
個人の判断・資金次第
個人の収益や属性、物件の収益性などを考慮して、頭金を入れるかを検討する必要があります。
頭金を入れる判断基準 | |
個人の属性 |
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物件の評価 |
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金融機関は、上記内容を元に、融資や融資の限度額を確定します。
融資限度額が物件の購入価格に満たない場合、頭金を個人で入れて不足分を補填することになるため、自己資金は余分に用意しておくと安心です。
サラリーマンの方は、比較的融資が通りやすい、地銀や信用金庫などを選択すれば希望額が通りやすくなります。
2割程度の頭金を入れている人が多い
一般的に、不動産投資での頭金の目安は、「2割」程度といわれています。
各種金融機関を対象にした、「金融庁の投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」では、以下の結果が出ています。
・物件の購入金額の一部を顧客の自己資金で賄わせているかの分布
銀行 | 信用金庫など | ||
必ず行う | 15% | 必ず行う | 17% |
2/3以上で行う | 63% | 2/3以上で行う | 30% |
1/3程度で行う | 16% | 1/3程度で行う | 40% |
行わない | 5% | 行わない | 13% |
(参考:金融庁 投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果)
融資を確実に返済できる能力があるかを判断するために、金融機関は頭金を必要とします。
実際の金額にばらつきはありますが、一般的に、頭金の目安は「物件価格に対して1割〜2割程度」といわれています。
不動産投資ローンは年収の5〜10倍が目安
不動産投資ローンで融資できる金額は、年収の5〜10倍が目安となります。
例:年収600万円の方→融資額3000万円〜6000万円 |
しかし、個人の属性や物件の収益性などが反映し、必ず希望の額が融資できるわけではありません。
まずは金融機関に相談し、個人の状況からどれくらいの融資が可能か確認しましょう。
頭金なしで不動産投資を始める方法
頭金なしで不動産投資を始めるために、抑えてほしいポイントがあります。
- フルローン
- 頭金なしでの不動産投資は融資が厳しい
いずれにしても、自己資金が余分にあると安心して始められるため、あらかじめ準備しておくのをおすすめします。
フルローン
自己資金がなくても投資を始められるのが、フルローンを利用して物件を購入するケースです。
上記表でも、自己資金の補填を行わない不動産業者があったり、返済期間を40年以上に設定したりする金融機関もあります。
頭金を抑えられれば、自己資金を余分に残せるため、修繕費や経費を補填できます。
しかし、フルローンの利用は、金融機関と不動産会社選びが最も大切になるため、信頼できる会社を選ぶのがポイントです。
頭金なしでの不動産投資は融資が厳しい
頭金なしでフルローンを利用する場合、審査が非常に厳しい点を覚えておきましょう。
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上記条件を満たすことができれば、フルローンの合格基準になるため、初心者では厳しいケースもあります。
頭金を入れて不動産投資を始めるメリット
頭金を入れるのは、どのようなメリットが得られるのでしょうか?
- ローン審査に通りやすい
- ローン返済の負担が減る
- 金利アップのリスク対策ができる
特に初心者の方は、金融機関から頭金の有無を厳しくみられるため、必ず抑えておきましょう。
ローン審査に通りやすい
頭金を用意できるということは、金融機関から返済能力があると認められるため、ローン審査を通りやすくなります。
上記の表でも、銀行・信用金庫の両方で、「15〜17%」が必ず自己資金で一部を賄ってもらうと結果が出ています。
自己資金の確保ができている=信用できると判断され、属性や物件の評価査定と同様、審査の基準に反映されるでしょう。
しかし、住宅ローンとは異なり、不動産投資ローンの審査基準はさまざまな要因が絡むため、必ずしも希望額の融資が下りるわけではありません。
ローン返済の負担が減る
頭金を入れることによって、融資額の返済や、利息分の支払いを減らすことができます。
修善費や管理費など、諸経費は継続してかかるため、月々のローン返済額が減少すれば、家賃収入も増加します。
その費用を大型修繕のために積み立てたり、事業拡大のための資金にしたりと、戦術も立てやすくなるでしょう。
金利アップのリスク対策ができる
頭金を入れて不動産投資ローンを組んだ場合、融資額が抑えられるため、元金や金利も減少します。
金利は元金に応じて変動するため、頭金を入れて元金を少なくできれば、金利アップのリスクに備えられます。
残債が多い状態で金利アップになった場合、返済額も上昇してしまうため、初心者の方は自己資金を余分に用意しておくと安心です。
頭金なしで不動産投資を始める注意点
頭金を入れずに不動産投資を始める場合は、以下のリスクを把握しておきましょう。
- 月々のローン返済金額が多くなる
- 出口戦略が限られる
不動産投資は、購入時に出口戦略をある程度考えておく必要があるため、下記のリスクを把握しておきましょう。
月々のローン返済金額が多くなる
フルローンでの不動産投資は、頭金を入れないため、毎月の返済額が高くなります。
一般的に、毎月の家賃収入からローンを返済していきますが、返済金額が高くなると毎月の家賃収入では賄えなくなるリスクもあります。
修繕リスクや空室リスクなど、予測できないケースもあるため、負担を減らすことを意識しましょう。
出口戦略が限られる
頭金を入れずに不動産投資を始めると、売却時に影響が出ることも。
- 物件の価値が購入時よりも下落したタイミング
- 空室などに対応できず経営が難しくなったタイミング
- まとまったお金が欲しいタイミング
など、売却時のパターンですが、フルローンの場合、返済額が高く完済できない可能性もあります。
売却しても利益にならなかったり、修繕や空室を埋めるための資金もなかったりという、「出口戦略」のない状態になるケースもあります。
そのため、頭金をうまく活用することは、出口戦略の構築に有効といえるでしょう。
オーバーローンとは?
不動産投資におけるオーバーローンは、投資用物件の購入費用に加え、登記費用や手数料などを合わせて融資を受ける状態を指します。
購入費用と諸経費も融資を受けるため、自己資金を使用せず、物件を仕入れて投資ができるため、気になっている方も多いのではないでしょうか?
- レバエッジ効果を最大限活用できる
- 自己資金を手元に確保できる
オーバーローンにより、投資資金を大きく借入できるため、投資効果を高めてレバレッジ効果を最大限活用できます。
また、手元に自己資金を残しておけるため、事業拡大や修繕など、購入以外の用途に使用できる点はメリットといえるでしょう。
しかし、返済額が高くなるため、必然的にキャッシュフローは悪くなります。
また、長期でローン返済を行う必要があり、金利上昇によるリスクも高まるでしょう。
オーバーローンは規定も厳しく、違法と認められるケースもあるため、利用したい方はより慎重に検討する必要があります。
自己資金を抑えて不動産投資を始める方法
自己資金が少なくても、不動産投資を始めるために、覚えて欲しいポイントがあります。
- 資産価値が高い物件を選ぶ
- 入居率の高い管理会社を選ぶ
- 個人属性の高さを利用する
不動産投資に係るさまざまな要素から、購入時のシミュレーションを徹底しましょう。
資産価値が高い物件を選ぶ
不動産投資の融資を受ける際、購入する不動産を担保にする場合は、融資の条件が資産価値に左右されるため、価値の高い物件を選びましょう。
- 交通インフラが整っている
- 築年数が浅い
- 学校や病院などの周辺環境が整っている
- 長期的にみて需要の拡大が予測できる
上記ポイントを満たす物件は、資産価値が高いと判断され、自己資金を抑えた投資ができる可能性もあります。
「収益」と「売却」の両方を重視し、安定した経営を目指しましょう。
入居率の高い管理会社を選ぶ
管理会社の実績や評判などをリサーチして、入居付けに強い管理会社を選びましょう。
- 過去の管理実績が豊富
- 担当者の方と密に連絡を取れる
- 管理体制が整備されている
- インターネットを活用した集客が整備されている
管理実績が高い管理会社は、地域の特性を理解し、オーナーからも信頼されている証拠です。
管理実績を確認する際、同時に物件の入居率や空室率も確認するのがおすすめです。
総合的に判断し、信頼のおける管理会社を選択しましょう。
個人属性の高さを利用する
不動産投資ローンの融資を受ける際、物件の資産価値の他に、「個人属性」が審査に大きく作用します。
資産を多く持ち、ローンを返済する能力が高い人物を望むため、属性の低い方は融資自体が難しいケースもあるでしょう。
- 長期に渡って安定した収入を見込める仕事をしている
- 高年収帯の職業に就いている
- すでに資産を保有し、安定した経営をしている
個人属性が評価され、資産価値の高い物件と認められれば、フルローンで自己資金を抑えた投資を始められる可能性も高まります。
不動産投資を始める際は2割程度の頭金を入れることがおすすめ
不動産投資で頭金を入れたほうが良い理由や、頭金を抑えて投資を行う方法などを解説しました。
頭金を入れることで、個人属性の厳しい方でも融資が通りやすくなったり、月々のローン返済負担を減らせたりと、メリットが多くあります。
また、頭金は2割程度入れる方が多く、頭金なしのフルローンで発生するリスク対策にもなります。
しかし、2割はあくまで目安のため、個人属性や物件価値など、総合的な判断をして安定経営を目指しましょう。