株式投資の勉強をし始めると「空売り」という言葉を耳にする機会が多くなってきますよね。
しかし「空売りって何…?難しくて理解できない…」という方が大半ではないでしょうか?
そこで今回は、「空売り」の仕組みやメリット・リスクについて初心者の方にもわかりやすくご説明していきます。
空売りとは?空売りの仕組みを初心者の方にもわかりやすく解説
では、そもそも空売りとは何でしょうか?
詳しく解説していきます。
【用語説明】空売りとは?
空売り…証券会社から株式を借りて売り、決済期日までに買い戻して株式を返却し、その差額で利益を狙う取引のこと
そもそも、株式取引には「現物取引」と「信用取引」の2種類があります。
詳しい説明は以下の通りです。
- 現物取引…持っているお金の範囲内で株を買って取引すること
- 信用取引…自分が持っているお金以上に多くの株を買って取引すること
空売りは、証券会社から株を借りているわけですから、自分が持っているお金以上の株を取引きしています。
つまり、信用取引に入ります。
信用取引には、「信用買い」と「信用売り」があります。
- 信用買い…株を買うお金がないときに、証券会社などからお金を借りて株を買うこと
たとえば、証券会社に預けてあるお金が100万円あったとしたら、現物取引で買える株は手数料込みで100万円分なのに対し、信用買いなら3倍の300万円分の株を買うことができる - 信用売り…いわゆる「空売り」。信用買いは借りたお金で株を「買う」のに対し、信用売り、いわゆる空売りは、借りた株を「売る」こと
つまり、現物取引では実際に株を持っていないと売ることはできませんが、空売りでは「先に株を売ってから、株を買い戻す」ことができるのです。
空売りの流れと利益の上げ方
では、具体的にどのような流れで空売りをするのでしょうか?
数字も設定して詳しく解説していきます。
【空売りの流れと利益の上げ方】
- 株価が下がると予測が立てられる銘柄(会社A)の株を証券会社から借りる
- 例えば、会社Aの株価が証券会社から借りた時点で1000円だとする
あなたは証券会社から借りた会社Aの株を1000円で売る - 株価が800円に下がったときに売った株を買い戻す
つまり…
株を先に売ることで1000円を手にして、あとから800円を支払って買い戻すことで、
1000円-800円=200円
が手元に残ります。
この200円があなたの利益となるのです。
通常の株式取引が「安く買って高く売る」のに対して、「高く売って安く買う」と順番が逆になります。
空売り特有の利益の上げ方になるため、最初は戸惑うかもしれませんがとりあえず順番が逆になるだけと理解しておけば大丈夫です。
信用取引には2種類ある
空売りは信用取引ですが、信用取引には2種類あります。
「制度信用取引」と「一般信用取引」です。
以下詳しくご説明していきます。
- 制度信用取引…証券会社が選んだ銘柄だけが取引の対象となり、借りたお金や株の返済期限が取引所の規制により決まっている
- 一般信用取引…それぞれの証券会社の判断で銘柄や返済期限が決められている
このうち、信用取引として広く利用されているのは、制度信用取引です。
ちなみに、制度信用取引の銘柄は、証券取引所が選んでいます。
流通株式数や企業業績といった一定の基準から、信用銘柄や貸借銘柄を選定していますが、空売りができるのは「貸借銘柄」のみです。
貸借銘柄…証券会社が空売りに必要な株数を確保できない場合に、証券金融会社が株式を融通する銘柄のこと
空売りについてはご理解していただけたでしょうか?
ここまでの知識が理解できれば十分です。
空売りのメリット
「空売りの仕組みは理解できたけど、わざわざ空売りをするメリットって何…?」と疑問に感じている方が大半ではないでしょうか?
そこで、ここからは空売りのメリットを分かりやすくご説明していきます!
【空売りのメリット1】短期間で利益を得られる可能性が高い
空売りのメリット1つ目は、短期間で利益を得られる可能性が高いことです。
初心者の投資家の方にはおすすめできませんが、中級以上の投資家の方だと空売りの方が利益を得やすいという声もよく聞きます。
なぜなら、一般的に株価は上昇するスピードよりも下落するスピードの方が早いからです。
ただ、通常の「買い」に比べると利益率では圧倒的に劣ります。
利益率よりも短期間で利益を上げることを重視したいなら、空売りするのも一つの手法です。
【空売りのメリット2】株式相場が下がっている局面でも投資が可能
空売りのメリット2つ目は、株式相場が下がっている局面でも投資が可能なことです。
一般的に、株式投資では「高くなりそうな株を買うこと」で利益を得ますよね。
しかし、空売りは「安くなりそうな株を先に売ること」で利益を得ます。
つまり、現物取引であれば待つしかないタイミングでも、空売りだと投資のチャンスとして活用できるのです。
【空売りのメリット3】保有している株のリスクヘッジとして活用できる
空売りのメリット3つ目は、保有している株のリスクヘッジとして活用できることです。
株価はいつ下がるかわかりません。
しかし、株式投資をしていれば、たとえ株価が下がっても保有している株をどうしても手放せない局面もあります。
そんなときにリスクヘッジとして有効なのが「空売り」です。
たとえば、割高に買われている銘柄が適正な株価に落ち着くまでの空売りなど、空売りのタイミングを逃さないようにすることで適切なリスクヘッジが可能です。
空売りのリスク
「空売りのメリットは理解できたけど、株を借りるってやっぱり怖い…」と思われている方が多いのではないでしょうか?
しかし、大丈夫です!安心してください!
空売りにどのようなリスクがあるのかをしっかり理解しておけば、対策が取れます。
まずは、空売りにどのようなリスクがあるのかを正しく把握しましょう。
【空売りのリスク1】現物取引と異なり賃株料がかかる
空売りのリスク1つ目は、現物取引と異なり賃株料がかかることです。
賃株料とは、いわゆる株のレンタル料のことを指します。
空売りは、ないものを先に売るわけですから、誰かから株を借りる必要がありますよね。
市場に出せる株の在庫があるときは、賃株料はかからない、または低い金額のことが多いです。
しかし、あまりにも空売りが増えて株の在庫が減ると、レンタル料である賃株料は上がってしまいます。
空売りをする際には、日ごろから賃株料をチェックするクセをつけておくことが大切です。
【空売りのリスク2】配当金が出たら相当するお金を支払わなくてはいけない
空売りのリスク2つ目は、配当金が出たら相当するお金を支払わなくてはいけないことです。
権利確定日をまたいで空売りをしている場合、配当金に相当するお金を支払わなくてはなりません。
ちなみに、権利確定日とは何か皆さんご存知ですか?
権利確定日…会社によって月日は異なるが、会社の決算日であることが多い。株主優待を受けるには、会社の権利確定日に株主であることが必須
現物取引であれば配当金をもらえるのに対し、空売りでは配当金を支払わなくてはならないのです。
ちなみに、配当金相当の金額は、権利確定日から2.3か月後に残高から自動で引き落とされてしまうので、権利確定日をまたいで空売りをする場合は注意が必要です。
【空売りのリスク3】株価の急上昇(青天井)による損失
空売りのリスク3つ目は、株価の急上昇、いわゆる青天井による損失の可能性があることです。
青天井とは、株価などがむやみにどこまでも上がり続けることを指す言葉です。
通常の現物取引であれば、どれだけ株価が下がったとしても0円にはなりません。
株価がマイナスになることはあり得ないですよね。
しかし、空売りは株価が下がれば下がるほど利益が出るため、株価が急上昇してしまうと大きな損失となります。
株価が短期間で急上昇することは頻繁に起こりますし、株価はマイナスになることはありませんが、上値の上限はありません。
つまり、空売りをする場合は、徹底的に管理をしないと損失がどこまでも膨らんでしまう可能性があるのです。
初心者の方も安心!空売りのリスクを軽減するポイント3点
ここまで、空売りのメリットとリスクをお伝えしてきましたが、株式投資初心者の方は特に「空売りってやっぱり怖いな…」と思われたのではないでしょうか?
しかし、リスクを理解したなら、対策さえとればリスクを軽減することが可能ですよね。
そこで、最後に初心者の方も安心して空売りができるよう、リスクを軽減するポイントを3つご紹介します!
①発行済み株数が多く流動性の高い銘柄で行う
空売りのリスクを軽減するポイント1つ目は、発行済み株数が多く流動性が高い銘柄で行うことです。
株価はいつも予測通りに動くとは限りません。
万が一予測が外れて損切をする際に、流動性が低い銘柄だと、時価よりかなり高い価格ではないと買い戻しができなくなってしまいます。
また、連日ストップ高でいつまでも買い戻しができないという事態も起こりかねません。
一方、流動性が高い銘柄であれば株価の値動きが緩やかなため、時価近辺の価格で買い戻しが可能です。
株価が上昇する好材料があったとしても、いつまでも買い戻しができないことはほとんどありません。
②何度かに分けて売る
空売りのリスクを軽減するポイント2つ目は、何度かに分けて売ることです。
株価はいつも予測通りに動くとは限りません。
特に初心者の方は予測が外れてしまうことも多々あることでしょう。
株価が下がると思って空売りをした後に、急上昇してしまう可能性も十分にあるのです。
そのため、株は何度かに分けて売ることでリスクを軽減することができます。
例えば、200株売ろうと思っていたなら、まずは100株だけを空売りするようにします。その後株価が下がったらそれ以上の追加はしない方が賢明です。
逆にその後株価が上昇したら追加で100株空売りを実行するようにしてください。
ついつい一気に売ってしまいたくなる気持ちはわかりますが、株式投資で大切なことはリスクを徹底的に避けることです。
冷静な判断をするようにしましょう。
③損切を遵守する
空売りのリスクを軽減するポイント3つ目は、損切を遵守することです。
損切とは何か皆さんご存知ですか?
損切…損がでている株に見切りをつけて売ること
空売りに限らず、株式投資において損切を遵守することはとても大切です。
特に空売りの場合は、損失がどこまでも膨らんでしまうリスクがあります。
そのため、空売りをする場合は事前に損切価格を設定し必ず遵守するようにしてください。
空売りは上手に活用することで利益を得るチャンスを増やせる!
いかかでしたでしょうか?
空売りは、一見よく分からず難しく感じられるかもしれませんが、意外とシンプルなものだとわかっていただけたら幸いです。
初心者の方にはなかなか手を出しにくいと思いますが、空売りは実際の自分の資金以上の取引ができる唯一の方法です。
少し慣れてきたらぜひ一度やってみることをおすすめします。
リスクに注意して上手に活用できれば、とても良い手法ですよ。