スリーエム(MMM)は60年以上連続増配している米国企業で、業績も安定していることから安心して投資できる優良企業です。
しかし2018年頃から株価が急落し、2020年のコロナショックでは133ドル以下まで下落しました。
今回は老舗の優良企業と言われているスリーエムがなぜ暴落したのか、詳しく解説します。
株式相場は基準の高い企業であってもいつ暴落するかわかりません。
今後のリスクヘッジに役立てる為にも、スリーエムの暴落原因を把握しておきましょう。
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スリーエム(MMM)が暴落した原因
スリーエム(MMM)の暴落は2018年頃から始まっており、数回に分けて暴落しています。
スリーエム(MMM)が暴落した3つの原因
- 中国と米国の関係悪化
- 業績不振
- コロナショック
新型コロナウィルスが感染拡大する前から、中国と米国の関係は悪化しており、中国と取引していたスリーエムの業績が悪化するのではと不安が広がっていました。
スリーエムの暴落原因は大きく分けて3つあるので、今後の暴落回避を考える為にも把握しておきましょう。
中国と米国の関係悪化による懸念
2018年頃から米国と中国の関係は悪化しており、中国と取引の多いスリーエムの業績悪化が懸念されました。
さらに株価上昇で利確する投資家が出てくるタイミングだったので、2つの要因が重なり大暴落になりました。
2018年1月26日には258ドルありましたが、5月4日には200ドル以下になっており、
約4ヶ月で50ドル近く減少し大損した投資家も多数存在しています。
業績悪化
2018年の暴落後は横ばいを続け、2019年4月頃には一気に株価は上昇しています。
しかし2019年4月の決算内容が悪く1株あたりの利益予想が2.49ドルだったのに対して、実績で2.23ドルと下回り、1株あたりの利益見通しが10ドル台から9ドル台に引き下げられています。
上記の決算内容を見て、多くの投資家達が売却判断をした結果、1日で13%も下落しました。
1銘柄でダウ平均株価を160ドルも下げる結果となり、強い下落の影響を与えてしまいました。
コロナショック
2019年の業績悪化から再び株価の横ばいが続きましたが、コロナショックによって世界的経済不況がはじまり、スリーエムの株価も暴落しました。
2020年2月12日時点で163ドルあった株価が、3月23日には117ドルまで下落しており30%近い急落になっています。
しかしコロナウィルス感染拡大によるマスク需要が急増した為、スリーエムのヘルスケア製品の売上が上昇し株価は6月上旬の段階で暴落前の水準に戻っています。
現在は2019年に起きた暴落時の株価まで回復しており、順調な上昇傾向をみせています。
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スリーエム(MMM)の業績
スリーエム(MMM)の2018年12月期(連)~2020年12月期(連)の業績は下記の通りです。
スリーエム(MMM)の業績 | |||
---|---|---|---|
2020年12月期(連) | 2019年12月期(連) | 2018年12月期(連) | |
決算日 | 2020年12月31日 | 2019年12月31日 | 2018年12月31日 |
売上高 | 32,184,000千 | 32,136,000千 | 32,765,000千 |
営業利益 | 6,772,000千 | 6,060,000千 | 6,660,000千 |
税引前利益 | 6,711,000千 | 5,712,000千 | 7,000,000千 |
当期利益 | 5,384,000千 | 4,570,000千 | 5,349,000千 |
EPS (一株当たり利益) |
9.32 | 7.92 | 9.09 |
総資産 | 47,344,000千 | 44,659,000千 | 36,500,000千 |
自己資本 | 12,867,000千 | 10,063,000千 | 9,796,000千 |
自己資本比率 | 27.18% | 22.53% | 26.84% |
BPS (一株当たり純資産) |
22.27 | 17.50 | 16.99 |
資本金 | 9,000千 | 9,000千 | 9,000千 |
有利子負債 | 18,783,000千 | 19,359,000千 | 14,156,000千 |
引用元:Yahoo!ファイナンス
大暴落が起きた2019年はESPが7.92まで下がっており、株価暴落の状況が業績数値を見ても理解できます。
2014年頃から営業利益も伸び悩んでいる形なので、株を購入予定の人はスリーエムが業績をどう伸ばしていくか慎重に分析していく必要があります。
2019年頃から営業利益が低迷中
2019年の営業利益は6,060,000千となっており、2017年の7,234,000千と比べると大幅にダウンしています。
2019年の営業利益から2020年は回復していますが、2017年頃の営業利益を見ると完全に回復しきっていない状態がわかります。
ただし、コロナウィルス感染拡大によるマスク需要でヘルスケア製品の売上が伸びて来ているので、コロナの状況によっては需要の増加で業績が伸びていく可能性もあります。
EPS(一株あたりの利益)は2020年12月期で9.32をマーク
2020年12月期ではESPが9.32になっており、2019年の7.92から大きく回復しています。
ESPは高ければ高い程、株価上昇の可能性があるので2021年も右肩上がりになる可能性があります。
ESPは純利益が増加すれば比例して上昇するので、スリーエムは2020年時点で純利益が
増加していることになります。
しかし企業もESPを好調に見せるテクニックを持っているので、誤判断しないように注意しましょう。
2020年コロナショックでヘルスケア事業の売上が好調
2020年4月の決算で、売上高が前年同期比3%増の80億7500万ドルと発表しています。
新型コロナウィルスの感染拡大によるマスク需要や医療従事者に向けたヘルスケア製品の売上が伸びたことが1つの要因で、株価も比例して堅調に回復しています。
スリーエム(MMM)の配当実績
スリーエムの2014年~2021年の配当実績は下記の通りです。
引用元:A2Finance
2014年時点で0.86ドルを記録しており、2021年では1.48まで増配しています。
スリーエムは連続増配を続けている企業として有名で、インカムゲインを目的に投資している人にもおすすめできる銘柄です。
5年平均の増配率が9%を超えており、高水準の増配を維持しています。
しかし2020年は増配率が2%にとどまっており、連続増配が難しくなってきている状況でもあります。
62年以上増配を続けている
スリーエムは連続増配を62年間続けている企業で、高配当・連続増配銘柄として人気があります。
しかし配当性向が70%近くに達しているので、今後も連続増配を続けていけるのか不安視している投資家もいます。
スリーエムのように連続増配している銘柄は米国株式に多数存在しているので、インカムゲインで利益を上げていきたい人は、スリーエム以外の高配当銘柄に分散投資することを推奨します。
スリーエム(MMM)の株価は2021年現在上昇している
引用元:Bloomberg
スリーエムの株価はコロナショック後、順調に右肩上がりになっています。
52週レンジが131.12~203.16を記録しており、1年のトータルリターンは35.82%と好調です。
2018年にマークした最高値を更新するか現時点では不明確ですが、スリーエムの医療製品の売上や新しい事業展開の状況によっては期待できる相場環境です。
医療分野の営業利益を更に伸ばす可能性がある
スリーエムは老舗企業ということもあり、色々な事業を持っています。
- インダストリアル部門
- エレクトロニクス部門
- ヘルスケア部門
- コンシューマー部門
2021年現時点で、急成長しているのはヘルスケア部門で、コロナ禍にも関わらず売上を3%伸ばしました。
しかし、資材を製造しているインダストリアル部門や自動車部品等を製造するエレクトロニクス部門の売上が伸び悩んでおり、今後改善されるか要チェックする必要があります。
スリーエム(MMM)のような株価暴落リスクを回避する方法
スリーエムのような老舗企業でも株価暴落のリスクはあります。
今回紹介したような大暴落リスクを回避する方法を紹介します。
スリーエムの株を購入予定の人は、リスク回避方法を覚えて実践に取り入れてください。
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老舗企業だから安心できる投資先とは限らない
スリーエムだけでなく、どのような投資でも投資先を1本にすると暴落時に資産を失ってしまう危険性があります。
資産を運用する時は、「分散投資」を念頭に置いて投資しましょう。
スリーエムのような連続増配をしている優良企業でも株価暴落の危険性を持っているので、スリーエムと違うセクターの銘柄を買ったり、米国ETFで積立てをしたりして1つの投資先が潰れても他でカバーできる状況を作りましょう。
株式以外の分野にも投資する
2020年のコロナショックでは、世界の株式市場が大暴落しました。
先物取引も同じく暴落し、一時期原油の価格がマイナスになる事態に陥りました。
投資する方法を一つに絞ると、リスクオン・オフの事態に対応できない場合があります。
市場のリスクオフ・オンの切り替えが発生しても、利益を取り続けるようにするには株式以外の投資先に投資する必要があります。
為替や不動産投資など株式以外にも投資する方法はあるので、株式だけに絞らず色々な選択肢を持って運用してきましょう。
スリーエム(MMM)の株価は回復傾向にあるが分散投資しながら慎重に行動しよう
スリーエムの株価は現在回復傾向にありますが、コロナショックによって世界的に経済状況は不安定なので、分散投資をしながら資産を大損失しないように立ち回る必要があります。
老舗企業でも業績悪化で株価の暴落があり得ることが分かったので、投資先を一本化せず万が一を考えて運用しましょう。